◇
その後、すぐに雨が降ってきたから僕は空を見上げた。
最悪だ、と思った。傘なんかもちろん持っていないし、天候の変化は自分の体調にまた影響を与えやすいからだ。何より目の前にいる立花だって、傘なんか持ってきてないんだから濡れてしまう。
「うわ。雨……、お前、稽古場戻るんだろ? 早く戻れ」
「はいっ。白田先輩も……」
なぜか雨を受けても僕を見つめ続けていた立花に、早く戻れと促した。
僕が行ってからじゃないと、こいつは稽古場に戻らないなと気づいて立花に背中を向けて、クォーツ寮の自分の部屋へと向かう。
僕が背を向けてから靴音が響いた。走ってるのか……、そりゃ雨だから走るよな。
一方の僕は走る元気なんかなくて、まだ振り始めたばかりの雨を受けながら、今日のことを反芻する。
これから先、風が吹いて……、今日みたいな雨の日や、晴れの日が繰り返し訪れて。
季節が変わっていくのと同じように、僕たちもまた、変わっていって。
いつか今日よりもちゃんと、お前の力になれる日が、くるだろうか。
そんな淡い夢を見ながら、僕は雨で濡れた地面をいつもよりも強く、踏みしめた。

たかさか
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