三年生と白田先輩と立花くん

  • 白田先輩のことを心配しているクォーツ三年生と立花くんの話です(みんな白田先輩が好き

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三年生が呼んでいる、と呼びに来たスズくんはもう戻ったのだろうか。

呼んでいるとしたら、お店の席からだろうと思って戻ろうとすると、途中で根地先輩と鉢合わせた。

「あぁ、いた! 立花くん」

「根地先輩。あれ、それにフミさん、カイさんも」

根地先輩だけでなく、フミさんにカイさんの姿も見えたことで、根地先輩は「やだっ~~僕だけじゃなくフミもカイも同じこと考えてたの?」とおどけたように言う。

「まあな。俺たちより先に希佐の方が気づいてたけどな」

「ああ」

カイさんが深く頷いたのをみてから、根地先輩は「こんなところで立ち話するような話でもないんだけどさー」と前置いてから「白田くんの様子、見に行ってたんでしょ」と尋ねられる。

「様子……といいますか」

「僕たちもね、気にはなってたんだけどね」

眼鏡の位置を戻すようにして、おそらくこの先でまだ星を見続けている白田先輩のことがわかっているかように根地先輩は穏やかに喋りだす。

「途中から君が白田くんのことを追いかけるようになってさ」

「俺かカイか、クロがいってやるべきなのかって悩んでたら、一年のお前が行くからサ」

「は……! もしかして白田先輩、私のこと迷惑だって……」

「そうじゃない。安心しろ」

ふふ、とカイさんが笑ってあの優しい声で私の杞憂を否定してくれてほっとする。

「こんなこと後輩の君に話すべきじゃないなんてわかってるんだけど」

「こんな風に追いかけてくれるような一年がミツに出来るとも思わなかったし」

「美ツ騎自身がそれを受け入れて変わろうとしているのが三年の俺たちにもよくわかる」

時々、三年の先輩たちが白田先輩に対して厳しくも優しい視線を向けているのは気になっていた。歌の練習だけではなく、掛け合いや舞台上の演出だったり、脚本の読み合わせの練習についても今は白田先輩は見てくれる。

でも……、そうか。白田先輩は二年生だから、私たちが入る前は一年生で……。今の私たちみたいに右往左往していた……のかなと一瞬考えたけれど、そんな風にも見えないくらいに本当にしっかりしていて、やるべきことやらなければならないこと、そうした判断ができる人なんだって当たり前に接している。

「三年間って短いよなぁ、クロ」

「あぁ短いねぇ。たった一年のうちに否が応でも先輩になっちゃうんだ。立花くん、これは白田くんのことだけじゃなくて君にも言えることだからね」

「入った頃には一年後、二年後の自分なんか想像もできなかったはずなのにいつの間にかここにいる」

先輩たちはそれぞれしみじみと自分たちが経験したことを糧に話してくれる。一年後、二年後の自分も想像できるかと言われれば、全く想像できない。

今目の前にあることばかりに囚われて、どうしても必死になってしまう。でもそんながむしゃらな自分に、これから先にあることを忘れるな、と一歩先を歩いていた先輩たちが、こうして私たちに色んなことを教えてくれる。

「少し冷えてきたか……、希佐、もっかいミツんとこいって戻ってこいって呼んでこい」

「えと。大丈夫でしょうか?」

「おまーが呼びにいけばなんだかんだでミツはついてくるよ」

お前はもっと自分がミツに信頼されてるってことに自信持ちな、とフミさんに後押しされて、ちょっとなんだか嬉しくなる。

私、白田先輩に信頼されてる……のかな。

一方で、私は……白田先輩の、信頼に、応えられているのだろうか。

先輩たちに見送られるような形でもう一度白田先輩のところへ向かうと、「僕はまだここにいる」と言ったときと同じようにまだ、白田先輩はずっと星空を見上げていた。

「白田先輩っ」

つい弾むような声色で声かけをしてしまって、見られないように自分の口を手で塞ぐ。

「立花……、用事はもういいのか?」

「はい。お話できましたから……。先輩は……?」

「僕もそろそろ行こうかなって思ってたとこ。そしたらお前が来た」

白田先輩の目線が私のほうに向いて、少しどきりとする。さっきまで遠くを見ていたはずの視線が自分に向いたとわかるだけでこんなに胸が高鳴るのはなぜだろう。

見透かされてると思うからか。

見透かされないようにと願うからか。

信頼されていると第三者の目からみてもそうだと言ってもらえたことに嬉しさと罪悪感が、ぐちゃぐちゃに混ざり込んで悲しくなる。

「お前って、気がつくとそばにいるんだよな」

不思議そうに白田先輩はそんな事を言った。

私は咄嗟に、ずっとまとわりついてるような行動が不快なのかもと思ってすぐに弁明する。

「あっ。えーと、フミさんが白田先輩呼んでこいとおっしゃったので」

「……ふーん。じゃあお前の意思で僕を呼びにきたんじゃなかったのか」

そっか、と呟いた白田先輩の目線はどこか寂しく冷たく濁った気がした。別にどうでもいいけど、と続けた言葉にはどうでもよさなんかどこにも含まれている気がしなくて。

「でも、ミツに構おうとしているのはこいつの意思だよ。な、希佐」

ぽんと肩を叩かれて振り返るといつの間にかフミさんが。いつまでたってもこないんだもんよ、と言われて「すみません」と白田先輩が応じるのに続いて私も「すみません」と続ける。

「あぁ、いいって。それにしてもミツ、お前あんまり希佐困らせるなよ」

「困らせてなんかないですよ」

「希佐もあんましミツの言葉に真正面から応えすぎるなよ」

「へ。ええと、はい」

「じゃ俺からは以上……、もう打ち上げお開きだってよ。お前らも荷物もって、店の入口に集合」

俺、先行ってるからな、とフミさんが歩いていく。

私が白田先輩をちらりと見ると、白田先輩は「はぁ……」とため息をついてから、「行くぞ、立花」と私に声をかけた。

それに「はい」と応えて、私はその後姿についていく。

今は歩けばついていけそうな気がするけれど、やはり今日みたいに誰にも声をかけずにどこかへといってしまう白田先輩を見ていると、追いつけなくなってしまいそうな気がして足を留めてしまう。

「……立花?」

「あ、いえ! すみません、ぼーっとして」

「何してんだよ、行くぞ」

もう、という声を聞きながら、私は白田先輩の右隣に一歩下がるようにして、ついていった。

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