あなたに見惚れている

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 何度書き直しても、まとまらない流れに焦りを覚えたのはいつ頃だろうか。

 まとまった休みも取れていないだろうと事務所からの気遣いと環境を変えてみたらどうかというアドバイスを受けて、海沿いにひっそりと佇むこのホテルの一室に缶詰になってからもう一週間。

 普段からの癖で、部屋を暗くしていないとやる気がでてこないと思い込んでいたけれど、暗くても明るくても、もはや関係ないのかも。

 覗き込んでいたノートパソコンから漏れ出す無機質な明かりにただ照らされていると、テーブルの上に投げ出した状態になっていた携帯の存在が気になって春歌は手に取った。

(よかった……お仕事に関係する連絡はきてないです……)

 実は締切を一回伸ばしてもらっている。

 過集中気味で取り組んでいたせいもあって、仕事の連絡がきていたとしても気づけていなかっただろうから、携帯を確認して重要な連絡が一つもないことを確認して春歌はホッとした。

「あれ、誰かからメッセージが」

 本当に缶詰状態だったから、誰からも連絡はきているはずはないと思ったのに、一件だけ通知があった。

 いつも仲良くしてくれてる渋谷友千香からだろうかと画面を操作していると、連絡は彼女からではなかった。

(一十木くんです……)

 早乙女学園を卒業してからまだ一年ちょっと。アイドルを目指していた彼らは、アイドルとしてのお仕事をしっかりとはじめていて、同時に春歌も作曲家としての仕事にこうして取り組んでいた。

 彼らは歌をメインとしてデビューをしたから、音楽に関する仕事は多いけれど、それでもアイドルとして活動する彼らのお仕事内容は本当にバラエティ豊かだとテレビでちょくちょくその姿を見かけるようになって春歌は思う。

「やっほー七海! 返信はいらないよ! 先に言っとくね、忙しいって聞いてるから。ちゃんと寝てる? 寝る前に散歩すると、すっきりして気持ちいいよ。超オススメ!」

 いつもの音也が、七海~! と名前を叫びながら手を振ってやってくる姿がありありと浮かんでくる。

 そして、用事だけを伝えきると、じゃあねっ! とあっという間に去っていく姿までが想像できた。

 一十木くんはこうして時々、メッセージを送ってきてくれる。そのタイミングがいつも絶妙だな、と春歌はそう思う。

(一十木くんはどうして、わたしが困ってる時に連絡をくれるんでしょうか)

 不思議です、と彼からのメッセージが浮かぶ白い画面を何となく指先で撫でる。

 決して、向き合ってる問題がすぐ解決するようなメッセージではない。でも、彼からのメッセージがくると、心が軽くなる。

 寝る前に散歩すると、すっきりして気持ちいいという彼のアドバイスは、今の自分にとっても向いてるように感じられて、春歌は簡単な外出着へと着替えると、久しぶりに部屋を後にした。

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