君とひとつ屋根の下(前編)

  • AmazingAriaの「朝まで一緒に!?」みたいに驚く音也くんの反応があまりにも新鮮でよすぎたので、新鮮な感覚なままで「朝まで一緒に!?」のイベントを引き起こすお話です。はたして音也くんは冷静を保つことができるのでしょうか……? 長くなりそうなので前編・後編でわけようとして中編に入りました。

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 シャイニング事務所の会議室を借りて行っていた仕事の打ち合わせが終わり、一十木音也は会議室を出る支度を始めていた。

 ゴールデンタイムのバラエティ番組にゲストで呼ばれることが決まり、いつもよりも気分は高揚している。

 うまくいけばレギュラーも夢じゃないという話も聞かされて、気合も入ってくる。

 打ち合わせ相手であるテレビ局の関係者を見送ってから最後に部屋を出たその瞬間に、嬉しくって「よっしゃ!」と拳を握りしめていると、慌てた様子で音也の方へと駆け寄ってくる人の姿があった。

「おおお、音也くん」

「春歌っ……」

 今のを見られていたとしたら、ちょっと恥ずかしい。

 今の見てた? と音也が確認しようとするより先に「音也くん、すみません! スマホを充電できるような何かをお持ちではないでしょうか!」と焦った様子で聞かれてしまって音也は「うん。あるよ」とすぐに担いでいたボディバッグの中をまさぐった。

 貸して欲しいと頼まれたモバイルバッテリーの存在をバッグの中で手探りで確認しつつ「ええと、あっちで話す?」と音也は声をかける。

 春歌も「はい」と頷いて、二人で事務所内に用意されていたオープンスタイルのリフレッシュスペースに用意されている机と椅子に向かい合うようにして座った。

「それで、これモバイルバッテリー。ちゃんと充電出来てると思うんだけど、できてなかったらごめん」

「ありがとうっ……助かります」

「あ、ケーブルこれ」

「何から何まで……」

「いえいえー」

 本当に助かりましたと、音也と同じシャイニング事務所に所属する作曲家であり、そして音也と恋人としての付き合いを続けている七海春歌は先ほどまでの焦った表情からようやくほっとしたような表情を見せたのを見て、音也もなんとなく微笑んだ。

「それでどうしたの? 仕事で慌ててた?」

「う、うん。今日、リテイクが続いてて……その関係の連絡がくるはずで……あっ、きた」

「リテイク。そりゃあ大変だ」

 リテイクという言葉を聞いて音也もウッと胸が詰まる。いや、むしろ、前向きな撮り直しであれば特に気にすることはない。

 ただうまく調子が出ない時の「もう一度やりましょう」という促すような声を聞くと、さっきのじゃだめだったか~と一発で花丸がもらえなかったことにガッカリしてしまう時がある。

 このところシャイニング事務所社長である、シャイニング早乙女相手に、春歌は何度も曲を書き直させられているという噂を音也は聞いていた。

 音也と一緒に曲作りをする時は直しをする時ももちろんあるけれど、それはお互いにもっとよりよくしようという気持ちからだったから、今、目の前で彼女が再び見せているリテイクへの焦りとは違う。

 メールを読み込んでいるのだろう。春歌がしばらく黙り込んでいるのを音也はジッと眺め続ける。

(めちゃくちゃ真剣な表情してる)

 普段は平常心を心がけているから、彼女を目の前にして色々と考えこまないようにしているのに、今日はああだこうだと彼女のことをひたすらに眺めてしまった。

 夏がやってきて、普段の服装よりも薄着のような気がする彼女のことを眺めては今の季節を知る。

「はぁ……よかった、このまま通りそう」

 反射的に呟いたのだろう彼女の独り言に「ほんとっ? やったね、春歌」と音也が勝手に一緒に喜ぶ。

 春歌が目をぱちぱちさせながら驚いた表情をしているものだから、音也もあれれと首をひねった。

「あれ。曲、通ったんだよね? おめでとう」

「……あ、そっか。独り言、いってたんだ」

 そっか、そっかそっかと春歌はどうして音也が知ってるのだろうという疑問を一気に解決させてから「ありがとう音也くん」とお礼を述べた。

「えへへー。春歌がお仕事頑張ってるんだから応援しなきゃねー」

「音也くんに応援してもらえると元気がでます」

「ほんと? 実は俺もさっき出たかったバラエティ番組にゲストで出れるようになってさ! うまくいけばこのままレギュラーになれるかもっ。頑張ってるとちゃんと見てくれてる人がいるんだなって思うと嬉しくってさ」

「もしかして、音也くんがずっと出たがっていたあの番組ですか?」

「そうそう。春歌もこの番組は音也くんに向いてると思いますってずっとお勧めしてくれたやつ! やっとテレビの中から春歌にかっこいいところを見せれるよ」

 だから期待して待っててねというように音也が伝えると、春歌も嬉しそうに頷いた。

 そして一瞬途切れた会話で、まだ何か話したいことがあるといったような春歌の気配を感じて、音也はどうぞと自然に促す。

 すると、彼女は申し訳無さそうに切り出した。

「……あ、あの、もう一つお願いがあるのですが……」

「春歌からのお願い? なんでもどうぞ」

「今夜、どこか泊まれる場所をご存知ではないでしょうか……」

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