君とひとつ屋根の下(後編)

  • というわけで続きです。メチャクチャ更新まで時間がかかってしまったのはこちらも本にするかどうかで3本同時進行していたからなのでした。
    ここ最近の音春がすごい、ので、Dolce Vita……の色々を考えながら書きました。

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「ふわぁぁ……」

「音也くん、おっきなあくびですねぇ~」

「那月に見られてたー!」

 うわぁ恥ずかしいと大きく開けていた口を噤むと、その様子を見てさらに穏やかな声で早朝ロケで一緒になった四ノ宮那月が続ける。

「朝早いですからねぇ~。どーしても眠くなっちゃいますよね」

「うーん……うん」

 出番前の待機所として設けられていたテントの中でむにゃむにゃとした様子の音也を見て、那月は「もしかして音也くん、昨日眠れなかったですか?」と確認する。

「……うーん……うん、そう。全然寝れなかったー」

 眠れなかった様子なのに、どこか幸せそうだなと那月は音也の体調が悪いというわけではなさそう、ということを気にしつつも、あくびを噛み殺すようにしている音也を心配そうに眺める。

「あくびばっかりしててごめんっ、大丈夫、本番はいける!」

 その日のロケには音也と那月の二人で出演する仕事で、音也はその宣言通りにとくに問題なく那月との掛け合いもアドリブも上手に終えて、一仕事を終えた。

 その日だけがこの調子だったのなら、那月もそこまで気にすることはなかったかもしれない。

 しかしそれから1週間近く、いつ仕事で会っても音也が眠そうにしていることが那月にとって気がかりだった。

 音也と一緒の仕事が事務所のメンバーの中でも多かったというのも様子が気になった理由の一つだろう。

 音也がレギュラー入りを目指しているスポーツバラエティの番組にゲストとして一緒に参加することになった時にも音也はやはり眠そうにしていた。

 音也の様子を気にしつつも「大丈夫、いける!」という彼自身の言葉通り、問題なくやってきていた。

 だからこそ、今回の仕事も問題ないのだろうとわかってはいたはずなのに、ゲストとして呼ばれたスポーツバラエティ番組内で行われる体力がなければ続かないようなチャレンジが続く中で、恐れていたことが起きてしまった。

 この日の収録は何キロあるのかわからないような大きな丸太を走りながら運んで、時間内に何本運べるかを競うゲーム的な種目だった。

 ゲストチームとして那月と音也、そして翔も加わって三人でリレーをする形で丸太を運び続けていくのだが、那月が一度に運ぶ丸太の本数が異常すぎて、ゲームとしては盛り上がっていたものの、那月から音也に丸太を引き渡してから問題が起きた。

「音也~! 那月が持ってきた丸太の本数、そもそも多すぎんだから何本か捨てていっていいからな!」

 翔からのアドバイスに音也は「平気平気ー!」と引き渡された丸太を必死に抱え込みながら走ろうとする。

 何しろ今、この勝負は瀬戸際で那月が運んできた丸太の本数を、最後の走者である音也がゴールまで運びきれば優勝できるのだ。

 ゲストチームとして優勝できれば、この番組へのレギュラー出演ができることになっている。

 音也自身もそうだけれど、那月も翔も一緒にレギュラーを勝ち取れる機会なのだから、音也にとっては絶対に負けられないと思う1戦だった。

 だからこそ意気込んではいたものの、連日の寝不足が原因だったのかもしれない。

 抱え込んでいたどれだけの重さがあるかわからない丸太を、不注意から音也は自分の足元に落としてしまった。

「一旦カメラ止めてー!」

 ざわざわとした声と怒声が混じり合う。異変に気付いた那月が慌てて音也の元へと駆け寄って、音也の足を押しつぶしている丸太を押しのける。

「音也くん! 大丈夫ですか!?」

「……大丈夫……」

「お前っ、大丈夫なわけねえだろ、顔色悪すぎ!!」

 同じく駆けつけた翔に「大丈夫だよこれくらい……撮影続けて……」と痛みをこらえるような声で歩きだそうとする音也に、翔は歩けるわけないだろ! と叫ぶ。

 スポーツバラエティであることも含めて事故に備えて医療班として医師が控えていたのは幸いだった。

 スタッフに呼ばれて駆けつけた医師から応急処置をすぐに受けることができた音也は、そのまま病院での精密検査が必要ということで病院へと車で向かった。

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