七海がおかしくなっちゃった!

  • 学生時代の音春なのですが、当方が「うわあああ!えっちなおとはるが読みたい!!!」と急に発作を起こしたことにより生まれた昔の再録に書き足したものです。ご都合主義で順番逆で矛盾もわりとひどいので、ご注意ください。

Next Post Previous Post 疲れた音也くんを責める春歌ちゃんの話

 

 翌日。俺はしっかりと寝不足だった。生あくびが続いて、授業の半分も集中できない。

 それになんだかお腹も全然空かない。自分に異変が起きていることは明らかだった。

 同じ教室で授業を受けている七海のことを見る。

 ……変わらないなと思った。むしろ昨日だって変わらないように見えた。

 もしかしたらあれは夢だったのかも、なんて思うのは寝不足すぎて頭の半分が夢の中に溺れているからなのかもしれない。

 体育の授業がはじまってグラウンドに出ると、男子の種目はサッカーだったから嬉しかったはずなのになんか気分が優れないな……とぼーっとしていると、マサが「保健室で休んできたらどうだ」と心配そうに声をかけてくれた。

「保健室~……俺、行ったことないからどこかわかんない」

「仕方がない……七海、すまない一十木が気分が優れないというので保健室までついていっていってくれないか」

「え!? 七海っ?」

「俺は授業内で任されている仕事があるので離れられないのだ。七海ならお前のことをちゃんと保健室まで送り届けてくれるだろう」

 そうだな、と呼ばれて小走りでこっちまでやってきた七海を見たマサに応える形で七海も「は、はいっ」と返事をした。

「それじゃ一十木くん、保健室まで送るね」

「あ、うん……」

 彼女の唇の動き一つ一つが、なぜかとても気になった。

 無意識にでも目で追ってしまう。

 昨日の出来事を君は覚えているのかな、そんなことを考えながら俺の少し前を先導するようにして歩く、彼女の小さな背中を見守る。

「一十木くん、保健室はこちらです……保健室の先生は学園長先生が兼任されているのですが」

 そうなのだ。早乙女学園の学園長たるシャイニング早乙女はなんと医師免許も所持している。

 さらに養護教諭としての免許も持っているというのだからもはやなんでもありだ。

「最近お忙しいらしくて、気分が悪い時は好きにベッドを使ってチョーダイとおっしゃってました」

 チョーダイのところを若干モノマネっぽくしゃべる七海が少しおもしろくて笑うと、それに気づいたのか「なんかおかしかった?」と七海が小首を傾げてこちらに尋ねてくる。

「ううん。なんでもない」

「本当に? なんかわたし、おかしなこと言ってませんか?」

 おろおろとした様子を見せる七海を見ていると、昨日のほうがよっぽどおかしかったけど? と口に出そうになる。

 ベッドはこちらですからと七海に案内されると、保健室内には二人だけしかいない状態だった。

 保健室の窓は若干開いていて、そこから吹き込むそよ風が白いレースのカーテンと一緒に、ベッドの周りを囲む仕切りをゆらゆらと揺らしている。

 そしてその風は、俺に背中を向けている七海の毛先をさらって首筋を露わにした。

 季節の香りなのかな。それとも彼女の匂いだったのかな。

 とにかく鼻腔をくすぐってきたその甘い香りに我慢ができずに気づけば俺は保健室のベッドの上に、七海のことをどんっと押し倒して、そのまま覆いかぶさっていた。

「???」

 本気で意味がわからないという目線を下から投げかけられる。

 俺だって昨日はそうだったよ。

 でも、もし、また今日、昨日みたいに七海に主導権を握られるのはすっごく困るというか男のプライドみたいなものが許さなかったから、そうなる前に先手を打たなきゃなんて、そう思ったんだ。

「い、一十木くん……?」

 なんでしょう、という言葉が続いたかもしれない唇を必死に塞ぐ。

 昨日とは違って、んんんんん! というように口を塞がれて混乱した七海が暴れ出したので、手首をぎゅっと抑え込んで必死にキスを続けた。

 俺だって、七海にリードされなくたってちゃんとできるもんね。

 それでも長いキスはお互いの酸素を奪い尽くしていってしまう。

 ぷはっと解放するかのように口を離すと、七海が信じられないといったような表情で俺を見ていた。

「今日のはどうだった、キス」

 感想を聞いてみようと、答えを促すと七海は「きょ、今日の……?」と何もわかってなさそうな返事をする。

「昨日もしたじゃん、キス。俺、七海からあれこれされちゃってマジでショックだったんだから」

「……へ?」

「だ、だからー……昨日もこうやって手繋いだり……キスしたりしたじゃん?」

 何の話? みたいに流さないでくれよと俺は彼女の手を取って、ぎゅっと繋いだ。

 それから、さっきよりもできる限り優しくできるように何度もキスをした。

 キスなんてしたことなかったから、本当に拙い情けない動きだったと思うけれど、それでも恋焦がれた女の子とキスをする興奮はすごかった。

 はじめてのキスがああだったことを上塗りするように、何度も何度も……彼女の唇が二人の唾液で濡れて光っていくのを視界の隅に入れながら、柔らかい部分を食むようにしつつキスを繰り返した。

 随分と長くキスをしてたと思う。

 それからもう一度「ど、どう?」と聞いてみる。

「どうって……」

「昨日は七海の方がすごかったから、俺も頑張ってみたんだけど」

「……? わ、わたしのほうがすごい……?」

 おかしいな。

 昨日のあの積極的な七海とは違うって、いつもの七海だってなんとなくでもわかっているのだけれど、じゃあ昨日のはなんだったんだって、そんな疑問すら置き去りにしつつ俺は彼女の着ていた制服に手をかけた。

 だってこんなえっちなキスをしてしまったのなら、もう止められない。

 頭の中で(したいしたいしたいしたい)っていうストレートな感情が最大ボリュームで響いていて、戸惑う七海の表情すら消し去ってしまう。

 最初に受けた抵抗がまたあるのかなと思ったけれど、驚くほど素直に七海は制服を脱がされてくれた。

 するするすると目の前の出来事を受け入れていく彼女を前にして心臓が張り裂けそうになる。

 スカートも脱いでもらって……着込んでいたタイツも「いい?」って確認してみるけれど、うん、とも、やだとも言わずにただ視線を泳がせている彼女を見ながら俺はごくりと唾を飲み込みつつ、タイツに手をかけて下着も脱がしていった。

 それから、ええと、きっといろいろしなくちゃいけないんだろうって思うから、手で彼女の身体を弄りながら、指先を彼女のナカへと埋めてみる。

「……い、一十木くん~……」

 何かが言いたげな七海の表情。

 して欲しくないならちゃんと言って、と促してみると、困った表情をするばかりで「嫌だ」という意思表示は確認できなかった。

 してほしいわけでもなく、したくないわけでもなく。

 たぶん曖昧な境界線にいるのだろうけれど、俺はその境界線を超えることしか考えてない状態だ。

 指先を曲げるようにしながら、彼女のナカの感触を確かめる。

 少しヒリついてたけど、小刻みに動かしていくうちに、ぬるぬるとした液体が指に絡んできて、滑りをよくしてくれた。

 いつまでも困った表情をしている七海を見ることに俺自身も困ったから、彼女のナカを柔らかく解すために指でナカを弄りながら、ゆっくりとキスをした。

 するとキスに合わせて彼女のナカがビクビク動くのがわかる。

 唇にちゅ、とキスをして「気持ちいい?」って聞いてみると「わかんない……」と七海は小さくぼやいた。

「どうしたら気持ちよくなるかな……?」

 女の子とこういうことをするのは初めてだから、何もわからなくて、本人に聞かなくちゃと確認するけれど、七海はふるふると首を振ってはわかんない……と呟くだけだった。

「指でこうやってグチュグチュするのはきもちい?」

 どうかな? って耳元で聞いてあげると、「ん……」と吐いた息を混ぜるように艶っぽい声を七海が出す。

 ゆっくりと彼女のナカを指で突いていると、ぱくぱくと七海の口が動いている気がしたから、耳を寄せてみると「なんか、変なかんじ、です……」という反応が得られた。

「変な感じなのか」

 そっか、そうなんだ……と素直に彼女の感想を受け入れつつ、指を使って責め続けていると、腰がピクピクと反応するところがあって、そうした反応を見つつ角度をつけて弄り続けていると、七海が開いていた足をぎゅっと閉じようとする。

「足閉じちゃダメー」

「……でも、だって……」

 もじもじとした様子で言い訳しようとする七海が可愛い。

「さっきから身体がビクビクしてるよ。気持ちいいんじゃない?」

「……き、気持ちいい……?」

 不思議そうに俺を見た七海と目が合う。

 知らない体験に答えを教えてもらったというように七海は、「これ、気持ちいい……んだ」と途切れ途切れに繰り返した。

「少なくとも、最初の頃よりは気持ち良さそうに見えるけれど……」

 最初に指を挿入した時よりも、明らかに濡れているとは思った。

 ベールのようなものに包まれた指は、彼女のナカに形を合わせていっている気がする。

 何も迎え入れたことがないというような、ぎっちりとした締め付けを見せてくる肉壁は、だんだんと指の動きに合わせて柔らかく開いていってるんじゃないかなと思う。

 その様子を見て、溜め込んだ唾をゴクリと飲んで喉を鳴らす。

 指をゆっくりと引き抜くと、べっとりとした粘液が糸を引くようにして絡んできた。

 その粘液を、少し前に自分も下着を脱いで曝け出していた局部の先端へと塗り込む。

(あー……七海ので俺のべちょべちょだぁ……)

 いや、七海のせいでグチュグチュなのか、自分自身から吐き出されている体液が混ざり合ってグチュグチュになっているのかもう、よくわからない。

 塗り込むようにしながら皮を剥いで赤黒い先端を剥き出しにすると変わらずそよぐ風が触れてきて、少し痛かった。

 もっと濡れてないと先っちょが痛いと思って、指を使って間接的に塗り込むより彼女の入口を使ってぬるぬるを分けてもらったほうがいいやと割れ目部分に先っちょを押し付ける。

「ひゃ、う……!」

 触れた瞬間に七海が腰を浮かばせたので、「ごめん」と反射的に謝った。

 謝りながら、指の代わりに手を添えて先っちょ部分が入り込むようにぐりぐりぐりぐりと擦り付けるように押し付ける。

「あっ……あっ……」

「あれ。七海、気持ちいい?」

 いわゆる喘ぎ声っていうのか、なんともいえない声が聞こえたのが嬉しくて、聞いてみるけど七海は「なに、してるの?」と俺の行為を確認した。

「えっと……七海のナカに挿れたいなって」

 こうやって、先っちょ押し付けてるの、って教えるためにもう一回、彼女のじゅるじゅるに濡れている入口部分にめちゃくちゃに擦り付ける。

「一十木くんの……?」

「うん。えと、俺、七海とこういうことしてみたくて」

 七海からキスされちゃったし、あんなにエッチなキスができるんだったら、そのうちしちゃうんじゃないかって急にどうしようもない焦りみたいなのがやってきて、抑えきれなくなっちゃったんだよね……と自分自身の浅はかさに呆れ返りながら、彼女の入口を先っぽで弄び続けた。

 二人の大切な部分が触れ合うと、じんわりと熱くて、溶けるような感覚になる。

 ぐちぐちぐちと泡立つ音に、じゅくじゅくとした粘着質な音を立てつつ、血の集まりで勃起しきった先端は彼女の入口からナカを求めて少しずつ入りこんでいく。

「うあ。七海んなか、あったか……」

「あ、あう……」

 ぎゅっと七海が目をつぶっているのを見ながら、腰を引いては押しての小刻みな動きで先っぽを必死にナカで出し入れを繰り返す。

 じゅぼじゅぼと卑猥な音が立って、本当にいやらしくて、気持ちよくてたまらない。

 俺、もしかして、七海とエッチしてるのかとか、そういう、どこか他人事のように行為を客観視しつつも、彼女の上にゆっくりと覆いかぶさるようにしながら、もっと奥まで挿れたいとか、そんなことを思ったけれど、七海のナカはすごく狭いのがよくわかった。

(狭すぎ……気持ちよすぎ……さきっぽしか入らない……)

 どうしようと思いながらも先っぽを筆のように巧みに操りながら、腰をゆっくりと振って先っぽだけで犯してるうちに気づけば我慢できずに精液が漏れ出るみたいに出てきたのがわかって、あ、俺、もう射精しちゃってるのか? と焦った。

(まてまてまて……)

 はあ、はあ、と焦りからくる衝動と興奮から息を吐き出す。

 彼女の入口にかかった精液を自分の親指でペンキを塗りたくるようにしながら彼女のナカへと塗りたくっていく。

(あー……七海が俺の吸ってる~……これってやばいのかも……)

 やばいんだろうな、とか、今してる行為がすでにやばいことはもうわかる。

 一回目の射精で少し萎んでこのままじゃ中折れするかもと思って七海の身体をまさぐっていく。

 好きな女の子の柔らかい身体を最大限に摂取して元気になりたい……。細っこいくびれをぎゅっと掴んでから、上へ上へと冒険を続けて、制服を脱がしたのだから上半身は裸なわけで胸の膨らみにたどり着いて、ドキドキしながらいつも服越しに見ていた彼女の乳房を手のひらで覆うようにしながらゆっくりと揉む。

「あ、あ……」

 またしても掠れるような喘ぎ声が聞こえてきて、それだけでもう興奮してしまう。

 掌ごしに感じる信じられないような柔らかい肉体と、咽るように甘い彼女の吐息、萎んでいた下半身がムキムキと元気になるのがわかる。

「七海……」

 名前を呼びながら、鼻先を彼女の首筋に押し付ける。

 柔らかくて、でも弾力があって、跳ね返すような胸を揉み続けながら、勃起した先っちょを誘導しながら、もう一度彼女のナカへとにゅるにゅる入りこませていく。

「ああ……、あ、ダメ……」

「ダメ?」

 ここに来て初めて聞く拒絶の言葉にドキッとして胸を揉んでいた手の動きや、挿入し続けようとした下半身の動きを止めてから聞き返す。

「七海、ダメ……?」

「だ、だって、一十木くん、こ、こんなことしちゃったら……」

「気持ちいいんじゃないの?」

 だって、こんなに濡れてるじゃんと耳元で囁いてあげると、七海はビクビクと身体を震わせる。

 狭すぎて先っぽしか入らないかもと思っていたナカも、どろどろに濡れていたからもう少し入るかも……と腰をくねらせながら、もう少し埋めてあげると「あっ……あ、……」と七海がまたしても声をあげて震えている。

 彼女が困ったように手を動かしていたから、繋いであげると、ぐっと力が入ってくるのが伝わってくる。

 それから彼女のナカが俺のに慣れてくれるようにしばらくキスをし続けながら、様子を窺った。

 正直、一気に押し込んでぐちゃぐちゃに腰を振って擦りたいとか思ったけど、彼女のナカは本当に緊張が伝わってくるくらいに震えていて、先端から中腹にかけて俺の形に合わせて慣れさせてあげないと無理なんだろうなと悟った。

 10分……20分くらいかな……あとそろそろで体育の授業が終わるんだろうなとか、冷静にそんなことまで考えながら、保健室はその時間も二人きりのまま、時々ぎしっとベッドが軋む音を立てながら、七海のナカに中途半端に入り込みながら彼女が馴れるの待ち続けた。

 そろそろと腰を進めながら、ゆっくりと引いて、ナカを静かにかき混ぜる。

 ぐちゅ……ぐちゅ……と粘着質な音が響くのを聞きながら、こうして何度か往復を繰り返していると、ごりごりとしていた感覚だったのが、滑りがよくなって、押し戻るかのような弾力がなくなってくる。

「七海、そろそろぜんぶ入るかも……」

「……あっ……う、うん……」

 ほんのりと頬を赤らめている彼女を見下ろしながら、挿れちゃうねと腰を押し付けていく。

 ぐっぐっと押し開きつつ、根元までねじこんで袋を乗せるようにして、ようやく全部入っちゃったと感動が押し寄せた。

 保健室の真っ白なベッドの上で、桜のような色味が差す彼女の柔らかな肉体の上に、小麦色に焼けた俺の身体がのしかかっている。

 彼女のことを想っては慰めてなんとも言えぬ自己嫌悪に襲われてはまた慰めての繰り返しだったモノが今は憧れの彼女の肉体の一部のように埋め込まれている。

 性器同士が淫らに交わるその衝動を目の当たりにしながら(俺、七海としちゃってる)とその事実を頭に身体に刻みつけていく。

(色々と…………なんかもお……余裕とかなんもない……)

 あーやばい。絶え間ない快感となぜか押し寄せる罪悪感に苛まれながら身体を必死に合わせていく。

 そもそも10分20分も半ば挿入した状態のままよく耐えた方だ。最後まで入り込めたのが快感のトドメとなってもおかしくないというように身体が小刻みに震えたかと思ったら、俺はあっという間に果ててしまった。

「それで? そのどう考えてもやばい薬を誰にぶっかけたんだ?」

 フゥ~~~とベッドの上で裸同士の肌を絡ませ合って、行為後の余韻に浸りながらこのまま柔らかい彼女を抱きしめていたいと思っていたところで一気に緊張が走った。

 扉が開く音と、閉じる音。

 この声は、Sクラスの日向先生……かな?

 そして続くのは馴染みのある、学園長の声。

「アレは確か林檎サンのところのぉ……Aクラス……ミス・ナナミデース!」

「七海か。呼び出して体調を確認しないとな……ってかそもそもどういう薬なんだ」

「異性に対して積極的になるお薬デース、まだ不完全だったので効果は一日で切れるのでラッキーデシタ」

「なんちゅーもんを作ってんだアンタは……作るのはいいとして学園内への持ち込みは今度からぜってぇするなよ」

「あのお薬は好きな相手じゃないと積極的にはなれまセンからそんなに実害はないはずデース! 性愛の恐ろしさを覚えさせるために作りマシタ」

「なんじゃそりゃ」

 ここにしまいこんでる怪しげな薬を全部没収すっからなと保健室にある薬品棚から薬瓶のようなものを回収している音がカチャカチャと室内に響く。

「むむぅ、それらはミーの大切な研究成果、取り上げられるのは心外デース!」

「うるせえ、こんな危険物を持ち込むな! おら、行くぞ」

 再び保健室の扉が開き、閉まる音がする。

 学園長、そして日向先生の声が完全に遠ざかったのを確認してから、ようやく七海のことを見て聞いてみた。

「……もしかして七海、変な薬を学園長にかけられちゃったの?」

「確かに言われてみれば、その……昨日は学園長とたまたま廊下でばったりと出会って何かにぶつかって、そこから記憶が曖昧だったような……」

 寮に戻ってからは記憶が鮮明だったんですけど、と心当たりがあることを思い出すように七海はぽつりと語る。

「じゃあ、俺にいきなりキスしたのとかも七海は覚えてなかったんだ!?」

「ええっ? わたしが一十木くんに!?」

 ぶるぶるぶるというように七海が必死に首を振る。

 あ、じゃあ、七海はやっぱり、本人の意思ではなくて変な薬で変にされちゃっただけで……?

 じゃあ、本人が積極的にキスしてその先を望んでいたわけ、ではなくて……。

 二人でいそいそと脱ぎ捨ててた制服を拾って着替え直してから、なんとも言えぬ雰囲気になる。

「………」

 ど、どうしよう。

 俺、めちゃくちゃ取り返しのつかないことしちゃったんじゃ……?

 お互いに戸惑っていると、七海の方から話しかけてくれた。

「わ、わたし一十木くんにキスしたりしたんですか?」

「うん。超すごかった。舌とかぐにぐに入ってきてさ、べろべろちゅーって感じで」

「……」

「あ、いや、びっくりしたけど俺はすごく気持ちよかったっていうか~!」

「べろべろちゅー……」

 七海の顔が真っ赤に染まって、わなわなと手が震えているのがわかる。

 でもだって、それは事実なのであって、俺だってびっくりしたんだもん。

「まあでも相手が俺でよかったよ。七海が俺じゃない男にべろべろちゅーしたら頭おかしくなるとこだった」

「だってそれは、あの、学園長先生がおっしゃってましたよね」

「ん?」

 保健室でこんなことしてんのバレたら俺だけじゃなくて七海も退学になるかもってそればっかり考えてたから、正直途中から学園長と日向先生の話はあんまり聞いてなかったかも。

「す、好きな相手じゃないと積極的になれないという……」

 自分で言ってみて、途中で何かに気づいたようにごにょごにょと七海は喋らなくなってしまった。

「え?」

 今なんていったのと確認しようとしたけれど、七海は話を切り替えてしまった。

「しょ、正直、こ、こんなところでするのもっ、急にされるのもっ、怖かったですけど……」

「……う、うん、そうだよね、ごめんなさい……」

「でも、一十木くんのこと嫌いではないですし、その、断りたくないっていう気持ちもあって……」

「そうなんだ」

「で、でも、これからはもうダメです、そういうのはダメです、できません!」

「え? これからはキスもエッチもなし?」

 なんか雰囲気的にもしかしたら、これからもできるかもとか思ってたら普通に断られてショックを受けた。

「だって、一十木くんは、ああいうことたくさんしたことあるかもだけど、わたし、はじめてで、わからなくて」

「えっ。なんか心外、俺、ああいうことしたの七海とが初めてなんだけどっ」

 俺って、いろんなコとキスしたりエッチするような男だって思われてたことっ?

 それは誤解だと思って、今まで好きな女の子いたことないし、ファーストキス奪ってきたのは七海だし、えっちも七海が初めてだったよっと必死に説明する。

「いいいいいまは、だって、課題曲も作らなきゃですし卒業オーディションもありますから」

「そりゃそうだけど……」

 でもなんか、今まで抱え込んでたもやもやを一気に乗り越えてしまったせいなのか、七海にキスしても身体に触れてもいいのかもしれないなんていう甘えと欲が出てきてしまってる。

「そそそれに、わたしと一十木くんはアイドルを目指す生徒と作曲家を目指す生徒の、パートナーであって」

「あ」

 確かに、なんかいろんなものを一気に吹き飛ばして身体だけつながっちゃった気がする。

 でも、好きだって言葉にする前に、うっかり身体同士が引き寄せられてどうにかなっちゃうこともあるんじゃない? なんて思う。

 実際起きた出来事がそれを物語っている。

 でも、そういう関係になりたいとは思っていたから、色々と順番おかしいかもしんないけど、ちゃんと告白しようとしたところで「ごごごめんなさい、もう体育の授業も終わるので!」と七海はスゴイ勢いで保健室を飛び出していってしまった。

「あー……」

 どうしよう。

 お互いの気持ちはなんとなくわかったはずなのに、どうしたらもっとうまく伝えられるのだろう。

 勢いはもちろんあったけれど、この気持ちは嘘でも偽りでも何でもないのに。

 グチャグチャになった白いシーツに白いベッドに、色濃く残る色んな染みが今日起きた出来事は夢でも何でもなかったと教えてくれる。

(俺、やっぱり七海が好きなんだなー……)

 ぼんやりとした頭で、思い浮かぶのはそんなことばかり。

 数分前の繋がりを思い浮かべる度にドキドキして胸が一杯になってしまう。

(あー……だめだー……! 俺、七海のこともっともっと、めちゃくちゃ好きになっちゃった……)

 こんなことするんじゃなかったって後悔するんだとしたら、この一点に限る。

 どうしよう、七海のことをもっともっとめちゃくちゃ好きになってしまった。

 好きだからキスしたいって思ったし、その先もしちゃったけど、しちゃったらもっと好きになっちゃうんだな。

(あー、やっぱ我慢しておいた方がよかったのかもー……)

 取り残された保健室で一人頭を抱えたり、座り込んだりを繰り返す。

 これじゃ今までよりも七海のことを考える時間が増えてしまって、ギターを触る時間だって減っちゃうかもしれない。

 俺にもっと理性があれば。

 ていうか七海はどうだったんだろう、気持ちよかったのかな。俺ばっかり気持ちよくなってなかったかな。

 やっぱりもう1回はして、七海はどうなのって確かめたいけど、もうダメですって言われちゃったし。

 課題曲と卒業オーディションの話をした時の七海の表情は、すごく真剣だった。

 もちろん俺だって、アイドルになるために必要なことには真剣に取り組むつもりだけれど、同じくらい七海に対して真剣に取り組みたいと思ってるっ。

「よし!」

 まずはこのびしょ濡れシーツを証拠隠滅しよう。

 二人の汗やら何やらが染み込んでて絶対にヤバイと思った俺はベッドからシーツを剥ぎ取って、寮にある備え付けのランドリーへと向かって走り出した。

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