そうして誓った日に限って、とんでもなく組まれたギチギチスケジュールとその内容に音也は震えた。
身体を使うロケは普段から多かったものの、今日に限ってそうした仕事がびっちりと詰まっていたのだ。
電車に乗って旅をするロケだと思えば、あちらこちらへと走らされて取材許可を取りにいき、ドラマの撮影だと思ったら、サッカー得意でしょ、といわれてフットサルのシーンをぶっ通して一時間以上撮影し、ライブ前のダンスのリハがあって、三時間以上ぶっ通しで踊り続けて、そのまま夕方の生放送に出るのに長距離移動して……、最後のいつも出ているスポーツバラエティに出演する頃には心身ともに音也はくたくただった。
(ダメだ……今、目の前にあったか~い毛布があって、そこに飛び込んだら俺はもう寝てしまう~!!)
最後の収録のOKでーーす! というADの声が響くまで音也は疲れからか反動で震え始める両足を抑えながら、もう今日はこのまま春歌んちに直行だ! とそのことばかりを考えていた。
嫌だ! 絶対に寝たくない! 負けるもんか!
楽屋での挨拶をすべて終えた瞬間に最後の力を振り絞って、ようやく建物の外へと出てから、タクシーへとなだれ込むように飛び乗った。
行き先をぱぱっと運転手に伝えてから、今から行く! という決意表明を春歌にしなければとメッセージで連絡をする。
「春歌っ。俺、今から行くからね~」
「はい。待ってます!」
すごい、今日俺が行くってことをちゃんと覚えててくれたのかすぐに春歌が返事を返してくれた〜、とジ〜ンと胸の奥から滲み出るような感動に打ち震えていると、タクシーの揺れが眠りに誘ってくる。
(寝たくはないけど、ああ、逆にタクシーんなかで眠っていけば、いいのかも……)
あぁそっかそっか、と急に納得した音也は、窓越しに映る明かりも眩しいやというように帽子を深く被ってから、うとうとしはじめた瞬間に「着きました」と声をかけられて、慌てて身体を起こした。
全然寝た気にならなかった……としょぼくれた表情のまま、タクシーの精算をして、ありがとうございました、とタクシーを降りる。
暫く歩くと、シャイニング事務所寮が見えてきて、そうだ、今日こそ俺は‼ とあらためてその決意を強める。
だって俺、もう何日間、春歌と会ってない?
ひい、ふう、みい、とそんな今更数えても無駄なことを指折りで数えて音也はぶるぶると顔を振ってやめた。
会ってないのもそうだし、キスもしていない。
キスもしていなければ、その先も、すっかりご無沙汰なわけであって……。
あぁもう、すごい。眠かったはずなのに、それを考えたら急に胸がドキドキ高鳴って、目がギンギンになってきた。
大丈夫、俺はきっと今日、したかったこと全部できるはずなんだ!
「音也くん、おかえりなさい」
呼び鈴を鳴らしてからすぐに玄関に出てくれた春歌をぎゅーっと抱きしめる。
目と目が合って、ただいまって言葉を早口で伝えてから、ひさしぶりのキス……と思ったタイミングで春歌の両手が音也の頬をぎゅっと捕まえた。
「おおお、音也くん……、すごいクマです!」
「へ。クマ? ぐおーって?」
「熊じゃなくて、目の隈、です!」
「ああ~……メイクさんにも言われた……メイクさんってすごいよね、あっというまにわからなく化粧しちゃうんだから」
「ごごごご、ごまかしちゃだめです! あっ、もちろんお仕事ってこともあるだろうけど、疲れをごまかしちゃダメ!」
「へっ」
「待ってくださいね、今、お風呂に入れますから。そうだ、今日は天気よくってベッドの毛布とシーツを干したばかりですから、二階にきてくださいっ……」
いつになく力が入った様子の春歌に手首を掴まれて、音也は「うわぁぁ~!」と声をあげながら二階まで一緒に階段を駆け上がる。
二階にあるベッドルームに着くと、ベッドの上に座るなり寝るなりしてくださいというように春歌は慌てふためきながらそれを伝えた。
「ゆっくり休んで下さい。わたし、お着替えの準備とかを……」
伝え終わると慌ただしい様子で一階に降りようとする春歌の手首を今度は音也が掴む。
急に手首をとらえられて、そのまま音也が座るベッドの上に力まかせに引き寄せられた春歌は、焦った表情の音也と顔を見合わせる。
「俺、今日は春歌に会いにきたんだけど……!」
「あ、会えましたね……」
「会えたけどっ、会うだけじゃなくて……、ああ~もぉ……」
「!?」
俺が何がしたいかわかるでしょ、といわんばかりにベッドの上で春歌を押し倒してから、お互いにじっと見つめ合う。
「お、音也くん……だ、ダメだよ、今日は寝ないと、ダメ……」
「なんで春歌はそんなに俺のこと寝かそうとするの? 俺としたくない?」
「そ、そうじゃなくて、だって、音也くん、こんなに働いてるのに、」
「大丈夫、仕事には影響ないようにするから」
「そうじゃなくてっ……」
春歌がばたつかせる足をぎゅっと自分の身体の体重で押し付けるようにしながら、音也はまだ開く彼女の唇をキスで塞ぐ。
「んぅッ……! お、と、やっく……っ」
「春歌は心配性だねぇ、大丈夫だって~~……」
久しぶりの春歌だ、と思うと興奮が冷めないと音也は喉を鳴らす。
それにしても、こんな風に抵抗されながらするのも初めてだったからちょっとそれも興奮する、なんて不埒なことを考えている。
だっていつも従順で、お願い? といえば素直に従う彼女が「やだやだ」というように抵抗する姿は滅多にないことだからだ。
それでも、何回目かのキスをして、着ていた部屋着をめくりながら、柔らかな肢体に舌を這わせて舐め尽くしていると、気持ちよくなってきたのか、その抵抗も止んできた。
「……春歌、気持ちよくなってきた?」
「……音也くん……」
「だってこんなに濡れてるし……」
いつの間にか伸びた手がどこを触っているのかに気づいて春歌は顔を真っ赤にしながら、少し意地悪そうな表情をした音也を見つめる。
「ひ、ひさしぶりだから……音也くんとするの……」
「うん。そうだね。だからなのかなぁ~~……俺もすっごく興奮してる……」
何度も何度もキスされて、久しぶりの触れ合いに春歌も身を竦めながら、でも音也くんは、疲れていますから、とまだまだ抵抗を続けようしている。
「むむむ、まだまだ俺としたいって気にならない? じゃあ春歌が欲しい欲しいっておねだりするまで今日はいじめちゃおう」
「えぇ……!」
「はぁ、可愛いね、その声」
いつになく丁寧な手つきになった音也の手が、春歌の身体の上を這っていく。
彼女にできるだけ体重をかけないように、とベッドの上でうまく身をよじらせていると、あぁ気持ちいいなと思う。
春歌自身の身体の柔らかさを身体全体に感じるように、抱きしめつつも首筋に鼻をよせると本当にいい匂いがする。
結んだ手と手の温もりにほっとした。
もしかしたら、ずっと緊張していたのかもしれない。
忙しいっていうのはもちろんあるけれど、一方で失敗ができないというプレッシャーがずっと続いていたのだと、彼女の元へと帰ってきて初めてそれを実感した。
「ほんとーのほんとーに、今日は何もせずに俺が寝ちゃっていいの?」
そんなことを囁きながら、首筋に舌を這わせていくと春歌が震えて感じているのが音也にも伝わる。
「俺はすごく春歌とシたいよ? ダメ?」
「だ……だだだ……だめではない……けどっ……」
「あー。春歌もシたくなってきた? シようよっ」
ね、とグリグリと硬いナニカを押し付けられて、それが意味することに気づいてこれ以上迫られたら、全部許してしまいそう、と春歌はぎゅうっと目をつむる。
「お、音也くんをこれ以上、疲れさせるわけにはいきません……」
「春歌も粘るねぇ……そりゃ身体のあっちこっちを使うから、疲れるかもだけど、男はむしろ、発散しないと大変なことになっちゃうの」
「大変なことになっちゃうの?」
「そお。今だってすっごく勃ってるし、どうにかしないとやばいかもしれない」
「ややや、やばいんですか……」
「うん……」
むむう、むにゃむにゃ、と途中から何やら音也の言動が若干怪しくなってきているなと春歌は感じる。
そういえば繋いでいる手が、普段よりもとても温かい。
「あの。もしかしてなのですが、音也くんは眠いのではないでしょうか?」
わかってしまいました、という表情で春歌が指をピッと立てながら指摘すると、そんにゃばかな、と音也はもむもむとした口調でゆっくりと否定する。
「眠くないよっ。春歌とするまで寝ないつもりできたもん」
「それはもしかして、もしかしなくても眠いと思うんですけど……」
「……眠くないってば」
ふわあ~あ、と油断したように音也があくびをしたのを見て、春歌は「ほら」と言うと、むむうと、違うもん、これはなんていうか、あくびしたかっただけだもの、と眠気を否定する。
「音也くん、ええっと……寝転がってください」
「……うん」
急に大人しくなった音也が春歌の隣に、ぼすんと頭を落とすようにして横になる。
「わあ、毛布もベッドもあったか~い。気持ちいい。春歌とおんなじくらいあったかいね」
「今日はすごくお天気よかったから。空がどこまでも澄み渡ってて、雲も綺麗で」
「そっかぁ。俺、ずーっと仕事中移動ばっかで天気を気にしたり、空を見るなんて時間全然なかったから、こうして教えてもらえるのが嬉しいや。それに春歌が嬉しそうに干してた様子がなんか伝わってくるね」
「それはその、だって今日は音也くんに会えるんだってそのことばかり考えてたので……」
だから、たくさんお部屋も掃除したし、毛布もベッドシーツも干したし、もしかしたら一緒にご飯食べれるかもと思って食材の買い出しもしたので、お腹が空いたらご飯も作れる準備もしてあります、と二人でベッドの上で横並びになりながら会話する。
「あぁ……そっか、うん……ありがとう。なんか俺、帰ってきてすぐに、春歌にさせてーって迫ったのめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた……」
春歌はこんな風に純粋に俺と会うことを楽しみにしてくれてたのに、会ってすぐにキスして、寝ましょうって心配してくれてるのに、させて、だなんて迫ってなんてなんか最低に思えてきた……と、ぷるぷると音也は震えた。
「えっ。いえ、それはその。もしかしたらそういうこともあるかもとはっ……」
「春歌も期待してくれてた?」
「……う……、うん……」
勇気を出して、頷いてくれた彼女がたまらなくいじらしくて可愛すぎるな、と音也は思った。
そっかぁ、期待しててくれたんだぁ……、という段々と小さくなっていく音也の声に春歌は聞き入る。
ふと彼を見ると、瞼がしっかり閉じられて、寝入ってしまったことがわかった。
やっぱり疲れていたのだろうな、と春歌はその寝顔を見て思う。
寝る時間もないくらい忙しい、ということはアイドルという仕事をしている彼にとっては嬉しいことだろう。
それでもやっぱり無理をしてはいけない、と思うのは春歌にとっても自戒の意味を込めて、だ。
(それにしても、久しぶりに音也くんにあんなに責められて大変でした……)
あのまま音也くんが色んな意味で元気なままで、おねだりするよう迫ってきたら大変だったな、と春歌は敏感になってしまった自分の身体を顧みてあらためて感じた。
胸元に目を落としてみれば、残されたキスマークがどれだけ激しく迫られていたのかを物語っている。
本当は自分だって、最後までしたい、と思っていたけれど……と思いつつも、そばで寝息を立てる音也を見れば、そんなの無理だったよね、と春歌は苦笑いする。
そうだ、音也くんの着替えを準備していたのだった、この服装のままで寝るのはきっとリラックスできないかもしれない、と思って眺めていると、音也が不意に目を覚ました。
目を覚ましてくれたのはチャンスかも、と春歌は音也に尋ねる。
「音也くん。今の服だと寝づらいかもしれないから、部屋着に着替えませんか? 一階にあるので、取ってきます」
「ん……あぁ、俺、寝てた? うん、わかった……」
もう完全に眠ろうとしている彼のモードに気づいて、あとは着替えさせてベッドの中にいれてあげなくちゃ、と考えながら春歌は一階まで降りて準備していた音也の部屋着を手にとって、また二階に戻る。
すると。
着替えの準備、と思ったのか、音也は上はもう全部脱いで上半身裸で、下半身も下着一枚だけを残してほとんど全裸の状態で眠っていた。
「おおおおお、おおお、おおお、音也くん、なんで脱いじゃったの……っ」
慌てた様子で春歌がそばまで駆け寄って声をかけると、音也はまだ浅い眠りだったのか「着替えるっていったからぁ……」と春歌の問いに答えた。
「き、着替えようっていったけどっ。全部脱いじゃうのは……」
「いいじゃん別に……」
「風邪引いちゃいますしっ……あ、あと、何だかその、とてもお元気そうなんですが」
んん? と音也の表情が歪んで、何が元気と言われたか気づいたのか、「あぁ……ダメかもね……」とぼんやりとした口調で続けた。
「えっ? えっ? ダメなんですか……その、このままだと大変なことになりますか?」
まだ意識がはっきりしていた頃の音也が「大変なことになる」「どうにかしないとやばいかもしれない」と話していたことを思い出した春歌は、この状態はいけないのかもしれないと思い込んでいた。
音也は、うーん、と口をもむもむさせながら「うーん、やばいかも。このままだと……」とそれなりにやばそう、という感じで顔を歪めた。
「このままだとどうなりますか……?」
焦った様子の春歌に、音也は悩ましい口調で一言、「爆発する」と、そう告げた。
「ばばばば、爆発……それは大変……」
どうしたら、と焦った様子の春歌に、またもや眠そうな声でうーんと唸ってから音也は「春歌が気持ちよくしてくれれば爆発はしないから」とまるで遺言のように一言残したかと思うと、「おやすみぃ」とそのまま告げて、また寝息を立て始めた。
そのまま眠ってしまった音也を見て、無理矢理起こすわけにもいかず、どうしようどうしようと春歌は狼狽える。
「あわわ。このままでは音也くんが爆発してしまいます……」
目の前で下着一枚で大の字になって眠る音也の反り立つ局部をジッと見つめながら、気持ちよくしてくれればって、きっとそういうことだよね……? と焦りながら春歌は考え込む。
とにかく、どうにかしなくちゃ、と自分もベッドの上に乗って、春歌は音也の反り立つ部分を手で触れた。
生暖かくて、人の肌と触れるのと何ら変わりはない。
それもそうか、人の一部なのだし……と少しビクビクしながらも触れていたけれど、音也の一部なのだから優しく触れれば大丈夫と思えてきた。
気持ちよく、気持ちよくする……音也くんは、こうしてよく自分に触れてたりする……。
こんなふうに、と春歌はそれを思い出しながら上下にゆっくりと手を動かしていく。
「あぅう……」
動き始めたのと同時に反応を見せた音也に、これであってるかどうか、正解を聞きたい! とすがるように春歌は尋ねてみる。
「音也くん……、ど、どうかな……」
「んんぅ……」
びくびくと身体を震わせてはいたけれど、気持ちいいのか、どうなのか、までの答えは教えてくれない音也に不安になりながらも、手の動きを休めずにいると先端部分が前よりも膨らんでつるりとした赤く丸い部分が剥き出しになってきたのがわかる。
(ど、どうしましょう、これは、えっと……)
なんだかとても大変なことになっているということだけは理解できる。
そして、どうにかしなければいけないこともわかる。
誰に聞いたわけでもない、目の前で眠る音也からねだられたわけでもない。ただ本能に従って、春歌は目の前にある音也の局部の先端を自身の口に含んだ。
「へぁぁ……!?」
びくっとした音也の反応にあわせて春歌も同じように身体をびくっとさせる。
もしかして起こしてしまったかな、という心配と同時にこんなことをして音也がもっと大変なことになってしまったらどうしようという不安もある。
大きな声で反応を見て起きたかと思いきや、音也はまだもむもむと口を動かしている。
そしてすぐにスーッと寝息を立てているのが聞こえてきた。
(起きてはいない……)
でも、先ほど口に咥えこんだ彼の一部はとっても元気だ。
こんなにも屹立して、自立するものなのだなと春歌は心の中で考えつつ、早くどうにかしてあげなくてはともう一度、意を決して口に含む。
むわっとした汗のような(おとこのひとの、におい……)と感じるものを口の中から鼻腔を通じて嗅ぎ取りながら、春歌は口の中で音也の先端を舌で舐るようにしつつしゃぶりつく。
時折、音也から聞こえる(んう……)という寝言のような声と、春歌が口を使ってしゃぶり尽くす音だけが、ただ部屋の中でこだまする。
(このあたり、とか……ここも……)
どこが気持ちいいのか音也自身には聞くことができないわけだから春歌一人で考えるしかない。
わずかな反応を頼りに、皮を舌で捲りつつその周辺を口を使ってしゃぶっていると、身体がよく反応するから気持ちいいのかもと春歌は考えた。
ようは彼が自分のナカに入り込んできた時に、どんな刺激が加わっているかを想像してみればいいのかもしれない。
こんな感じかな? こうかな……? 指で輪っかを作りつつ上下の動きも咥えて春歌が口淫に耽っていると、音也から「やばっ……なに、なんか……」とはっきりした声が聞こえてくる。
やっぱりここまで激しくしたら起きてしまったかもしれないです、と口に含んだまま彼の方へと視線を向ける。
けれど、音也は「うぁー……」という声を上げたかと思うと、右腕を伸ばして手の甲で目を覆って呻いた後に「やば……出そ」と熱い吐息と一緒に言葉を吐いた。
その瞬間、春歌の口のナカへと飛び出してくるものがある。
最初は勢いよく、そして一度だけではなく、何回か途切れ途切れに溢れてきたものを春歌は必死に口で受け止めた。
口の中で硬さを保っていたはずのものが、段々と縮んでいくのがわかる。これでもう、音也のいっていた「爆発」はないだろうと最後に汚れてしまった彼の局部を綺麗にしようともう一度口の中で何度もしゃぶる。
そうして綺麗にしようとした行為二反応したのか、またしても、最初と同じように今にも爆発しそうな硬さへと戻っていってしまった。
(……どどど、どうして……どうしましょう……)
もう一度、おくちでする? と春歌が動揺していると、音也から寝ぼけたような声で「はるかぁ……挿れて……」というリクエストが飛んできた。

たかさか
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