◇
結局これは夢じゃなかったんだともうわかっている。
最後に自分の独りよがりで身勝手な気持ちを叫ぶように押し付けていたら、身体中がもう限界だってなって、眠ってしまった。
そんな我儘すぎる自分のことを優しく、何度も何度も髪を撫でてくれる人がいる。
「春歌……」
「音也くん」
どれくらい寝ていたのだろう。最後のやりとりは最低だったなってそのことまでは音也も覚えてる。
寝た時は春歌のことを抱きしめていたはずなのに、今は自分が子供みたいに春歌の胸の中で抱きしめられて眠っていたのだと気づいて、うわ、すげぇ恥ずかしい……と思うのと同時に、なぜかとっても安心すると音也は素直にそう感じた。
「まだ寝ててもいいですよ」
「うん……」
「たくさん頑張って疲れちゃいましたね」
「……うん……」
よしよしと甘やかされて頭がおかしくなりそうだと音也は思った。
そもそも俺は全然頑張っていなくて、頑張ったのは春歌だと思うけれど、とか、余計なことを考えるまでは疲れは取れてきたらしい。
どうしよう。すげぇ情けない。情けないのにこんなにホッとしてしまう自分が怖い。
こうして何度も何度も春歌に髪を頭を撫でられて、背中をさすってもらって抱きしめられているだけで、泣きそうになるくらい幸せだって思えるのはなぜなのかがわからない。
「音也くん」
「……うん?」
「会いにきてくれてありがとう」
「……うん……」
会いたかったんだもの、当然だろっていつもならそんな言葉が出てくるはずなのに、どうしても言葉にならなくて、今はただ、抱きしめていてほしいと音也は、彼女の胸の中にもう少し近くというように顔を擦り付けた。

たかさか
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